昨日は、実家のある愛知県豊田市へ行ってきました。
母のお見舞いとお墓参りのためです。
新東名高速を使えば3時間少しで到着します。
山々の新緑が目に眩しく、富士山が美しく見られました。
帰省すると、空間を移動するというより、時間を移動する感覚になります。
私が豊田市で暮らしていたのは高校生の18歳までですが、
窓から見える風景も大きくは変わっていませんし、
当時読んでいた本や漫画がそのまま残されていて、その時にタイムスリップしたような気持ちになります。
ただ、そこに父も母も姉もいないことに時間の流れを感じます。
昨日、誰も使われていない家の中で、もう一度ここに暮らしてみたいという気持ちになりました。
今はオンラインで仕事ができる時代ですので、ワーケーションの場として
これからも十分この家で暮らせるのではないかと思いました。

さて、今回も、私か経営の要諦を学んでいる稲盛和夫さんの講和のまとめを掲載します。
2001年4月の機関誌41号に掲載されたもので、テーマは「日本人の経営は国境を越えられるか」です。
20年を経た今でも参考になることが多く書かれています。

80年代初めから半ばにかけて、1ドルが100円を切るという大変な円高が進行した。これを背景に、日本では米国を中心に海外への投資が殺到した。それから16、7年、あの時怒涛のように進出した日本企業の多くは「事業に失敗した」「大損をした」「結局は撤退した」という例が多い。日本の多くの企業は、円高を背景に有り余る資産をもって進出しさえすれば、海外で経営ができると思っていた。なぜ、日本人が国境を越えて経営をすることが難しいのでしょうか。それは日本の「文化」と欧米の「文化」の違いによるものではないか。日本は四季折々の変化と共に、山の幸、海の幸に恵まれた島国であるため、人心がまろやかで豊かな社会を育んできた。蒙古の襲来を除けば、他の民族から侵略されたこともない。1945年の敗戦後も、連合国軍に占領されたが7年ほどで主権を回復している。一方、欧米は、ギリシャ、ローマの時代から、国境を接して各民族がひしめき合っており、民族同士の壮絶な戦いの歴史がある。戦いの歴史を一つとっても、日本と欧州には違いがあり、その違いが「文化」の違いに繋がっている。欧米の人々は海外での経営の経験が、日本人よりはるかに豊富と言える。

日米欧経営スタイルの違い
1.トップダウンと合議制
欧米:トップダウン
社長に選ばれた人は会社経営の全権限を任されているため、トップダウン方式で意思決定する。成功すれば報酬を要求する。業績が低迷すれば責任をとらされる。
日本:合議制
社長といえども社内のコンセンサスを大切にするのが一般的。新社長が独断専行すれば反発が生じる。

2.実力主義と年功序列
欧米:実力主義
従業員の能力を「実力主義」で評価し、実績によって給与を支払う。若くても、力があり、仕事ができるものには高い給与を払う。
日本:年功序列
能力がある人は、若干給与が良くなり、同期より少し早くポストに昇進するかもしれないが、振れ幅の少ない「年功序列」で毎年確実に賃金が上がる枠組みで終身雇用という保証により、従業員のロイヤリティを高める。

3.契約社会と信用社会
欧米:契約社会
何をするにしても弁護士を入れて契約を結び、訴訟に発展することもある。
日本:信用社会
信頼と信用で成り立っているため、話し合いで解決する場合が多い。「喧嘩両成敗」という言葉もある。

4.明確な意思表示と曖昧な意思表示
欧米:明確な意思表示
物事の白黒をはっきりつける。
日本:曖昧な意思表示
イエス・ノーをはっきり言わず曖昧に意思疎通をし、争いに白黒の決着を付けず、根回しで物事を進めていく。

5.マニュアル化と自分で考える
欧米:マニュアル化
マニュアル化することで言葉の障壁や文化の障壁を乗り越える。職務権限も明確。
日本:自分で考える
日本では「一を聞いて十を知る」という言葉があるように、自分で考えて仕事を進めるのが良いとされている。

こうした現状がある中で「和魂洋才」の経営が適していると考える。日本の道徳観「誠実」「謙虚」「真摯」「感謝」「慈愛」という精神的基盤をもちながら、給与体系など、どうしても欧米の流儀が必要な仕組みは欧米流にするというもの。
それでも、利他や思いやりのない利己的な欧米の支社長や従業員は辞めていただくくらいの信念が必要。米国の電子部品メーカーの買収を成功に導いたのは、16年前のパートナーシップと相手に有利なまでの思いやりのある買収だった。